Japanische Klassiker mit Furigana
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かわいいやま
可愛い山
石川 欣一
Lesen Sie 可愛い山 (かわいいやま) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 98.791 Zeichen · 196 Bildschirme
雪のグラディエントは、素人の目には六十度近くに見える。とても上り下りは出来ぬくらい急である。然しステップが切ってある以上、又夕暮と共に雪が幾分固くなっている以上横切ることは大して苦にならぬ。よしんば辷っても、ピッケルの使用法をあやまらなければ、自分一人の身体くらいはとめることが出来る。雪は平気だが、あんな風に露出した土砂は、実にいやである。一度すべったら手も足もピッケルも用をなさぬ。下を見ると、水が狼の牙のような白い泡を、噴き上げている。落ちた日には、助かりっこない……と考えはしたものの、そこがやはり山を知る者の強味で、別に恐怖を感じるでもなく、雪渓にさしかかる。グン、グンと靴さきをステップに打ち込んで渡り切る。片足を砂にかける。ザラッ! と落ちる。ザザザザと通過して了う。しっかりした路についた時には、やれやれと思った。
路は崖のかたちそのままに、急に右へ入っている。ここにも谷が切れ込んでいるのである。Vの字を水平に置いたようなきれ込みである。こちらには路があるが、向う側は一面の砂土で――一体が風化しやすい岩石なのであろう。それが雪をかぶって更にもろくなった所へ、上から雪崩が落ちて来たので、ザラザラになっている――その灰色の断崖には、いくら見ても、どう考えても、路らしいものが見えぬ。