Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かわいいやま

可愛い山

石川 欣一

Lesen Sie 可愛い山 (かわいいやま) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 98.791 Zeichen · 196 Bildschirme

Aozora Bunko

キャッ! といったおこじょの嗚き声は、何度真似をしてもおかしかった。鹿島入りを下駄ばきで、たった一人、立山様に参るのだといって歩いて行った老婆の話は、神秘的で物すごかった。もう寒い。天幕から毛布を出して、それにくるまって話にふけった。いつの間にか空に、満月がかかっていた。いつの間にか……本当にいつの間にかである、我々は、濃い、ムクムクした白い雲によって、完全に下界と絶縁されていた。安曇の平野から、また黒部の谷から起った雲は、べっとりと一面に、中空に敷きつめたのである。その雲の上にあるものは、明かな月と稀なる星と、鹿島槍の中腹以上と、我々三人だけとであった。

私は急に恐ろしくなった。自然の大を感じたとか、我が身の小を知ったとかいうのではない。只、社会を組織する本能を持つ「人」がその社会――ある時はうるさく思い、いまわしく思う――から、絶対的に切り離された淋しさが身にこたえたのである。

月は静かであった。鹿島槍も静かであった。我々も黙っていた。ふと、近くの草地で、ゴソゴソとかすかな音がした。林蔵は、

「や、兎の奴、小便をなめに来ただな」

と沈黙を破って、手近の枯枝を一本、焚火に投げ込んだ。