Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かわいいやま

可愛い山

石川 欣一

Lesen Sie 可愛い山 (かわいいやま) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 98.791 Zeichen · 196 Bildschirme

Aozora Bunko

松蝉が嗚き、かけすがギャーギャーいって瑠璃色の羽根を落す。この雑木林に、松虫草が沢山咲いている。

僕は何回この林をぬけて山へ入ったことだろう。山へ入る第一日のたのしさ。空はあかるく荷は重く、はきなれぬ草鞋は足の底で妙にデコボコする。歩き出して一時間、小さな流れがあって、そこで第一回の休息をする。水は生ぬるいが、その日の晩方には、もう、手を入れるとちぎれそうな雪どけの水が流れる、大沢の小舎に着いているのだ。

この林に来て、背の高い松虫草を見るたびごとに、僕は「今年も山に来た」としみじみ思うのである。

ある時、とても暑い八月の一日、もうお昼近くであった。一緒に行った英国人の登山家は、ここの松虫草を見て「君、表面にこまかく露がうき出したグラスに、シャートルーズでつくったカクテルを充たし、その上にこの花を浮かべたらどうだろう」といった。山が好きで、時間をつぶし、銭を費し、精力を消粍して山に入りながら、その第一日の朝から人間は食物、のみ物の話をする。人情、東西相同じとでもいうか。

新渡戸先生のお伴をして米国へ行った時、ハドソン河上流のトロイという小さな都会に先生の友人がいて、そこのロータリイ・クラブの昼飯に講演をしてほしいと申し出た。