Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとじ・しなのじ
大和路・信濃路
堀 辰雄
Lesen Sie 大和路・信濃路 (やまとじ・しなのじ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.165 Zeichen · 115 Bildschirme
――でも、まだあそこいらには少しばかり残っていますの。」
もう薄暗くなり出している林の奥のほうにまだいくらか残雪が何かの文様のようにみえるのを、万里子さんはすこし気まり悪そうにして示した。
僕はもうそんなものはどうでもよかったが、すっかり葉が落ちて林の中がどこまでも透いてみえたりするのを珍らしそうに見ているM君におつきあいして、その儘しばらく三人でそこに立って見ていた。そのうち小屋のかげからボブが飛び出してきた。
「ボブ、駄目よ。……」万里子さんはその人なつこい犬が泥足でもって僕のほうに飛びかかろうとするのを、すばやく捕まえた。
「よう。」K君が小屋の中から首だけ出して僕たちに声をかけた。「何をしているんだい。寒いだろう。」
「こないだの雪をお見せしていますの。」万里子さんはボブがもがくのを漸っとおさえつけながら言った。
「雪なんぞはもうありあしないだろう。」寒がりのK君はうちの中でも頸巻をしたままで、小屋から出て来ようともせずに僕たちを促した。「早くはいりたまえ。」
「さっきここの林のいりぐちで、クルツといったかな、あの、変な女を見かけたが、なんだか夏とは見ちがえるような、凄い毛皮の外套を着て、真紅なベレかなんぞかぶって、気どった風に歩いていたが、こんな冬の村に一人きりで何をしているんだろう?」