Japanische Klassiker mit Furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme
河口は「そうとも」と云って湯呑の酒を呷った。気のせいか、いかにも見識を確証するような飲みかたであった。
「男ってものは外で難儀の多いもんだ」と増田は続けた、「まだけつっぺたの青いような若造の人繰りにへいこらしたり、無理な荷揚げにへたばっているのを、畜生のようにどなられたり、それこそ血の涙も出ねえようなおもいをしなけりゃあならねえ、だからてめえのうちへ帰ったときぐれえ、ついかかあにでも当りたくなるのが人情じゃあねえか」
おれのいうことが間違っているかと云って、増田はぐっと酒を飲みほし、良江がすぐに酌をしてやった。
「あにいの云うとおりよ、いつだってあにいの云うことは間違えなんかありゃあしねえさ」
「ところがうちのあまときたら負けちゃあいねえ、昔から一度だってはいとぬかしたためしがねえんだから」と増田は新しく注がれた酒を飲んで云った、「男が外で難儀をすれば、うちにいる女にだって難儀なことがあるんだ、それこそむし歯を五寸釘でほじくられるようなおもいをすることが幾らもあるんだ、けれどもあたしゃ女房だ、疲れて帰って来る亭主に、いちいちこうめったああめったって泣きごとを並べちゃあ悪いから、黙ってなんにも云わねえでがまんしている、おまえにゃあそんなことはわかっちゃいねえだろう、ってへこましゃあがるんだ」