Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

彼女たちにはそれ以上になにも云うことはなかった。慥かに、なにも云うことはなかったのだ。

いつもの時間になると、仕事着に着替え弁当の包をぶらぶらさげて、河口初太郎と増田益夫が水道端で顔を合わせた。

「よう」と増田が云った。

「よう」と河口が答えた。

「おてんとさまが眩しいや」と増田が云った、「ゆうべは飲みすぎちまった」

「飲みすぎちゃったな」と河口も云った、「なんだかまだふらふらすらあ」

そして二人は稼ぎにでかけた。かれらもまた、そのほかにはなにも云わず、云いたいことを隠しているとか、相手の気持をさぐっている、などというようすは微塵もなかった。それだけならさして驚くほどのことではないかもしれない、人間の云うことや行動は、かなり桁外れにみえても、たいていどこかでつじつまが合っているものだ。増田と河口との二た組の夫妻が、或る夜酒に酔って、それぞれ良人と妻をとりちがえて寝た、という出来事なら、このわれらの「街」では決して珍しい例ではないし、都市と町村の差別なく、巧みにかぶった仮面をぬげば、同じような冒険がどこにでもみつけだせる筈だ。

けれども、この二た組の場合は少しばかり異例であった。