Japanische Klassiker mit Furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme
顔はフットボールの球くらいもあって、まるく太く、躯もよく太っている。半助が飼うようになってからでも七年になるが、猫について見識のある人に云わせると、少なくみつもっても、十二、三年はとしをくっている、ということだが、この界隈でとらがボスのナンバー・ワンであることには、紛れがなかった。
「どうしたとら」六ちゃんは抱きあげたとらに話しかける、「今日はなにを停らした、トラックか電車か」
とらはにゃあと答える。声は出ない、にゃあというように口はあくが、声は出さないのである。交尾期や日常の闘争で声帯を酷使するため、よほど必要なときでない限り、声は出さないように注意している、といったふうであった。
「どのくらい停めた」六ちゃんはまたたずねる、「三台か五台か、てんぷらは食ったか」
こんども猫はにゃあというように口をあき、眼を細くして喉を鳴らす。てんぷらと云っても、それは六ちゃんのうちのではなく、本通りのむこう側の新道にある「天松」という店の、本格的なてんぷら屋のものであるが、とらとてんぷらの関係については、のちに記すとしよう。
「うちへ帰るんだな」六ちゃんは電車の方向を変えながら云う、「よしよし、規則違反で監督にみつかるとうるせえが、おれの電車でつれてってやろう、しっかりつかまってな、スピードをあげるからな、ほら、どですかでん