Japanische Klassiker mit Furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme
「どうしてもだめなんですか」と女は云った、声は囁くように低く、そして喉にからまってかすれた、「――勘弁してはもらえないんですか」
平さんは土間へおり、棚にあるニュームの鍋をあけてみた。それはからであった。女はめしを炊かなかったのだ。
からっぽの鍋を見た平さんは、すぐに米と麦を計りはじめた。女が今日に限ってめしを炊かなかった、ということにも気づかず、これまでずっと自分でしてきたことを、いまも変らずにやっているのだというふうな、極めて自然な、慣れきった手順で、――二つの蜜柑箱から、米と麦を定量ずつ計って鍋へ入れ、それを持って、彼は小屋から出ていった。
女は平さんを見なかった。平さんが水道端へ半分くらいいったと思われるじぶん、膝の上の小さな包を持って、疲れはてた人のように立ちあがり、小屋の中をぐるっと眺めまわした。すっかり神経をすりへらして、感情の動かなくなったような眼つきであった。
女は不決断に小屋を出、開き戸を閉めた。空には僅かに残照をうつした雲があり、それが地上の昏さを際だてていた。――女は小屋をまわって、窓の外に立っている枯木のところへいった。