Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

「とうちゃん」

次郎は父の顔を見た。彼自身の顔は涙でぐしゃぐしゃに濡れ、眼のまわりから頬まで、よごれた手でこすったためだろう、鼠色の斑ができていた。

「なんだ、次郎」

「とうちゃん」と次郎はまた云った、「ぼくたちみんな、とうちゃんの子じゃないって、ほんと」

太郎も花子も四郎も突然そこでかんしゃく玉が破裂でもしたかのように、びくっとし、そしてみんなが父親のほうを見た。そのようすには、かれらが同じことをながいあいだ疑ってい、それがついに表面へ出たので、いまこそ真偽を明らかに聞きたい、という期待があらわれていた。

良太郎は仕事の手を休め、一人ずつ順に、五人の子供たちの顔を眺めた。いつもの穏やかな微笑をうかべ、小さくてまるい眼を細めながら。そうしてまた、ゆっくりと仕事を続けた。

「そういうことは自分で考えてみるんだな」と良さんは云った、「――自分がとうちゃんの子か、そうではないかってさ」

子供たちは黙っていた。

「とうちゃんはみんなが自分の子だということを知っている」良さんはまをおいて続けた、「だからみんなが大事だし、みんなが可愛くてしょうがない、――けれどもおまえたちがとうちゃんを好きでもなく、自分のとうちゃんだと思えないなら、とうちゃんはおまえたちのとうちゃんじゃない、そうだろう次郎」