Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

三番目に寄って来たのは、二十七、八になる若夫人で、こまかい竪縞のはいったウールのツーピースにトルコ帽に似た赤い小さな帽子をかぶり、ショルダー・バッグを左の肩にかけていた。細おもての顔もきれいだし、化粧もあっさりしていて、側へ寄ると上品な香水の匂いがひろがった。

錆色のパンプスのハイヒールがあんまり細くて高いのを、春彦はあぶなっかしいなと思いながら、誠意をこめてあいそ笑いをし、容器のほうへ手を振った。

「これ、なあに」と若夫人は容器の中をのぞきながらきいた、「おさかなね」

「へえ、こっちが鮒でねがす」とちょろは答えた、「ふな、ご存じねでがすか」

「あらこれが鮒っていうの」若夫人は身をかがめ、眼をかがやかしてその魚に見入った。「まあきれい、まるで生きているようじゃないの」

「そのとおり、持ってくるまで生きていたっげが、持って来るについて水から揚げんたんへえ、田舎がちっと遠いもんでねがす」彼はあいそ笑いをし、鯉の容器へ手を振った、「その代りにゃあ、こっちの鯉は生きてるでへ、こんとおりぴんぴんだあ」

「あらほんと、鯉だわ」若夫人は熱心に見まもった、「鯉は覚えてるわ、まあうろこが金色に光ってるわ」