Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

「ちょっと諸君にきくが」島さんが急に、あらたまった調子で云った、「諸君は米屋からただで米を略奪したことがあるかね」

「借り倒しなら」と寒藤先生が答えた、「僕はその道の達人だ」

「いやそうじゃない、借りるんじゃなく略奪するんだ、それも正々堂々とさ、どうだい諸君」

誰も返辞をせず、好奇心をおこすようすさえなかった。この「街」の住人たちはひっくるめて、うまい話、というものを信じない。かれらはうまい話にとびついたため、これまでに幾たびとなく裏切られた覚えがある。かれらにとって、この世にうまい話があるなどとは、とうてい信じられなくなっていたのだ。

「それなら教えよう」

と島さんは云った。

まず鉄の釜の内部を水で濡らしてから、知らない米屋へゆき、米を二キロ計って入れさせる。二キロ以上でも以下でもいけない、というわけは心理学の応用問題だから略すが、二キロの米が釜の中に計り入れられたら、これを貸してもらえないかと問いかける。知らない顔だからたいてい断わるだろう、断わられたら残念そうに、ではまたこの次にしよう、と云って釜の中の米をあけて返す。釜の内部は濡れているから、米粒のおよそ一と側は貼り付いて残る。