Japanische Klassiker mit Furigana
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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme
こんどの戦争まで、彼はひもの町というところで呉服屋をやっていた。妻と男の子二人、店員を五人に女中を使って、町内では顔ききのほうであった。戦争になってから企業統制で呉服屋をやめ、国民服とか絹糸を扱う合同会社の役員に就任した。そのころは軍関係と手を握って、うまいしょうばいをし、金も流れこむし二号三号もできて、天下を取ったような贅沢な生活をした。――ところが十八年の冬、召集令状を受取った長男が、他人の細君と出奔して、熱海で身投げ心中をしたのがけちのつきはじめとなり、そのまえに召集されていた二男が、大陸で戦死する。空襲できれいに焼かれて裸になるというありさまで、敗戦の四、五日まえには、妻が栄養失調のために死んでしまった。
「いまでも毎晩、あたしは死んだ妻子や、囲った女たち二人と話をするんですよ、――とその年寄はおしまいに云うんだね、女房も二人の伜も、女たちも、まるで生きているように、笑ったり話したりするんです」
奇妙なことに、妻子も女たちもみな自分に好意をもっていて、恨んでいたり憎んだりするようなことは決してない。他人の妻と心中した長男とも、話してみると事情がよくわかるし、その関係はごく自然なもので、誰にも迷惑はかけていない、という事実まではっきりする。