Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

半助は夜具の中で伸びをし、大きな欠伸をしながら、躯のどこかを掻く。――とらに呼びかける声も囁くようだし、欠伸をするにも声は出さない。起きて夜具をたたみ、戸納へそれをしまうにも、殆んど物音をさせない。これらはすべて、大切な重病人が側に眠ってでもいるように、注意ぶかくひそやかにおこなわれた。――それから着替えをして井戸端へ出るのだが、たてつけの悪い格子と雨戸をあける音だけは、半助にも防ぎようがなかった。

「腹がへったかい」と彼は七厘でめしを炊きながら云う、「待ってろよ、もう少しだからな、とら」

とらはにゃあとなくが、口をあけるだけで声は出さない。小さなニュームの鍋でめしが炊きあがると、同じような小鍋で味噌汁を作り、そのあいだに漬け物を出し、お膳の支度をする。いまは田舎でもみかけない古風な、蓋付きの箱膳で、中に食器がはいってい、蓋を返して箱の上にのせると、そのまま食膳になった。終れば食器は布巾で拭いて、元のように箱の中へしまうから、勝手までいって洗うてまが省けた。半助はきれい好きなほうだが、それでもときたま、布巾を洗うだけで満足していた。

とらは半助の側をはなれない。