Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Lesen Sie 季節のない街 (きせつのないまち) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.379 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

「ドアをちゃんと閉めて下さい」彼女はまずそう命じてから、辰弥の問いに答えた、「ええ、その人は預かっています、あなたがたは家族の人ですか」

「いま院長にきいてみます」とまた彼女は云った、「たぶん面会謝絶だろうがね」

そして二人をぎろりと白い眼で睨み、五十キロもある荷物をはこびでもするような、たいぎそうなあるきぶりで奥へいった。面会謝絶という言葉を聞いたとき、母は辰弥の腕をぎゅっと掴んだ。彼はその母の手をやさしく叩き、しっかりするんだよおっかさん、大丈夫だよ、と囁いた。

「どうぞ」と戻って来た女が云った、「いま院長先生がおみえになるから」

辰弥は母を支えながら玄関へあがった。五足ばかりあるスリッパは、みな古く、ぞっとするほどきたならしく、やぶれたり擦り切れたりしていた。――二メートル四方ほどの待合室には、ニスの剥げた木の腰掛と、タバコの吸い殻だらけで火のない火鉢があり、壁に貼った診療時間割の紙も、一隅がやぶれて垂れさがっていた。

ぎしぎしきしむドアをあけて、おどろくほど背の低い、中年男がせかせかと出て来た。初めは子供かと思ったくらいで、躯も顔も子供っぽく肥えてい、顎の下に厚く肉がくびれていた。