Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
「そんなことはまあいいから、飲もうじゃないか?」
「あなたがお嬢さまと一緒になって森谷さまの旦那さまになられたら、おれらは自分の生命を投げ出してもあなたのためになるようなことをいたしますよ」
「飲もうじゃないか。紀久ちゃん! あんたも飲めよ」
正勝はそう言って紀久子にも盃を渡した。紀久子は微笑を含んで素直に盃を取った。開墾地の人たちはまたじっと驚きの目でそれを見た。紀久子はぐびりと盃を干した。
「わたしもう、これで帰ってもいいでしょ?」
紀久子は盃を置きながら言った。
「一緒に帰るから待てよ」
「平吾が外で待っているのよ」
「それじゃ、すぐ帰ろうか? 紀久ちゃん! いまここでみんなの踊りを見せてもらったんだがね。紀久ちゃんも踊って見せないか?」
「わたしの踊りなんか駄目だわ。それに着物がこれでは……」
「構わないさ。簡単でいいから、何か踊って見せてくれよ」
「できないんだけど……」
紀久子は微笑を含んでそう言いながらも、手を振り足を上げながら静かに踊りだした。開墾地の人たちは何事も忘れて、呆気に取られてそれを眺めていた。彼らは夢を見るようにして、そこに展開された思いがけぬ空気に驚異と喜悦との目を瞠っているのだった。