Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
そして、彼女の属している階級は一度結婚をした女性がその夫を失ったのちに、再婚によって幸福を得るというようなことはほとんど絶無と言ってもいいような習わしの中に横たわっていた。――雅子は幸福を失ってしまっていた。彼女の前途には、彼女の見渡すかぎり黒い幕が重々しく垂れていた。彼女はそれを見詰めながら、自分自身の苦悩に疲れ切って溜息を吐くのが常であった。
死んでいった者はそれでいい!――彼女のしばしば呟くこの言葉の中には、自分もあの時に一緒に殺されてしまったほうがよかったという感情が多分に含まれていた。
しかし、雅子は病院の中で心臓を腐らしている吉本をただに恨み憎んでいるのではなかった。
――最近の彼女の吉本についての思い出は、たいてい彼を哀れむ感情に変わってきていた。自分と同じように、不幸だけを自分のものとして生き残っている前途の真っ暗な人間の、新鮮な空気に触れることのできない蛆の湧きかけている心臓をそこに見いだした。
ことにも雅子は、発作症状から覚めたときの吉本の感情と意識とをとてもたまらないものとして感じた。
発作に襲われている間は全然意識を失っているのだから、感情を持たない人間として、死人にも同様になんらの同情も要さないわけなのだが、覚めているときの束縛感を思うと彼女は涙が出たりした。