Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
兄さんだけ心のうちに思っていてください。お父さまやお母さまの生きていたときのことを思い出したり、これからは兄さんが洗濯などまで自分でしなければならないことを考えると、涙が出てなりません。お父さまやお母さまのお墓にも、一日も早く石を立てたいと思います。それには、このままでいたのでは駄目だと思いますから、わたしは思い切って東京へ行くのです。わたしのことは死んだものと思って、どうぞ諦めてください。涙が出て書けませんからこれでやめます。どうぞお身体を大切にしてください。兄さんに万一のことがあると、わたしは天にも地にも、ほんとうに一人きりになってしまうのですから。ではさよなら。愚かしき妹の蔦代から。
正勝の目には、またも熱い涙が湧いた。しかし、彼はその悲しみのためにも、躊躇しているべきときではなかった。
「これを証拠として見せりゃあ、だれも疑いをかけやしませんよ」
「でも……でも……その死骸を……」
「死骸なんか、この谷底へ投げ込んでしまえばすぐもう熊に食われてしまうだろうし、熊に食われなくたってすぐもう雪が積もるから、来年の四、五月ごろになって雪が消えてから発見されても、自分で谷へ落ちて死んだのか鉄砲で殺されたのか、そのころには全然分からなくなっていますよ」