Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうろうき(しょしゅつ)
放浪記(初出)
林 芙美子
Lesen Sie 放浪記(初出) (ほうろうき(しょしゅつ)) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.349 Zeichen · 207 Bildschirme
私の前には、御飯にごった煮にお新香、まことに貧しき山海の珍味。合計拾弐銭也、のれんを出ると――どうもありがとう――お茶をたらふく呑んで、朝のあいさつをかわして、拾弐銭、どんづまりの世界は、光明と紙ひとえで、真に朗らかだ。
だが、あの四十近い労働者の事を思うと、これは又、拾銭玉一ツで、失望、どんぞこ、堕落との紙ひとえだ――。
お母さんだけでも東京へ来てくれゝば、何とか働きようもあるんだけど……沈むだけ沈んだ私は難破船、飛沫がかゝるどころではない、ザンブザンブ潮水を呑んで、結局私も昨夜の淫売婦と、そう変った考えも持っていやしない。
あの女は卅すぎていたかも知れない。私が男だったら、あのまゝ一直線にあの夜に溺れて今朝はあの女と、もう死ぬ話でもしていたか知れない。荷物を宿にあずけて、神田の職業紹介所に行く。
何と云う冷たいこうまんちきな女だろう、私は、どこへ行っても砂っ原のように亮々とした思いがするので、厭になってしまった。
お前さんに使ってもらうんじゃないんだよ。
おたんちん!
馬鹿野郎!
ひょっとこ!
そうくり返えしている間に、私の番が来た。桃色の吸取紙みたいなカードを渡すと、月給参拾位い……受付女史はこうつぶやくと、私の体を見て、まずせゝら笑って云った。