Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

Lesen Sie 放浪記(初出) (ほうろうき(しょしゅつ)) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.349 Zeichen · 207 Bildschirme

Aozora Bunko

あれから今日へ掛けての私は、もう無茶苦茶な世界への放浪だ。

「十五銭で接吻しておくれよ!」

と、酒場で駄々をこねたのも胸に残っている。

男なんてくだらない!

蹴散らして、蹈たくってやりたい怒に燃えて、ウイスキーも日本酒もちゃんぽんに呑み散らした、私の情けない姿が、こうして静かに雨の音を聞きながら、床の中にいると、いじらしく、憂鬱に浮かんで来る。今頃は、風でいっぱいふくらんだ蚊帳の中で、あの女優の首を抱えているであろう……と思うと、飛行船に乗って、バクレツダンを投げてやりたい気持ちだ。

私は宿酔いと、空腹でヒョロヒョロする体を立たせて、ありったけの一升ばかりの米を土釜に入れて、井戸端に出た。

下の人達は皆風呂に出たので、私はきがねもなく、大きい音をたてゝ米をサクサク洗った。雨にドブドブ濡れながら、只一筋にそっとはけて行く白い水の手ざわりを楽しんだ。

六月×日

朝。

ほがらかなお天気だ。雨戸をくると、白い蝶々が、雪のように群れて、男性的な季節の匂いが私を驚かす。

雲があんなに、むくむくもれ上っている。ほんとにいゝ仕事をしなくちゃあ、火鉢にいっぱい散らかった煙草の吸殻を捨てると、屋根裏の一人住いもいゝものだと思えた。