Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 197.228 Zeichen · 394 Bildschirme
辰の刻、お蔵びらき。
名香は、六尺の長持に秘せられてある。
「生前の思い出とせよ」
と、群臣――お供の馬廻りまで末代の物語と、遠くから拝観がゆるされる。
そして、取り出された香木の端――一寸八分ほどを、信長はいただいたのであった。
一寸八分の香木のために、この盛儀が執り行われたばかりか、ために奈良の町といい近郷の伽藍や名所といい、諸国から集まって来た人出で、春の空も埃に黄ばむばかりであった。
「どうも、仰山だな、信長のやることは少し……」
若い奈良法師たちのうわさを聞くと、そういう者もあるし、またこういう者もあった。
「政治だよ。信長は、あれでなかなか政治家なんだよ」
信長はたしかに武人にして政治家でもあった。
世間の具眼者が、彼をそう観たのは、中っている。
けれど、その時代の「政治」というものは、現代でいうところの「政治」とは相違があった。「政治」ということばそのものが、もっと高潔であり明朗であったのである。今日のごとく穢されていなかった。人間の天職のうちでいちばん遠大な理想と、広い仁愛を奉行し得る職として、諸人は常にその職能に景仰と信望をかけていた。