Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.406 Zeichen · 381 Bildschirme
けれど十兵衛光秀は、兄の子である。兄の下野守光綱が、自分に託して世を去った明智家の遺孤なのだ。――死なしては、亡き兄にすまない、と彼は、刻々に迫る城の運命と共に、それをのみさっきから胸に思いつめているのだった。
「……おお」
光安は、うめいて、茫然と立っていた。
水の手の水番小屋をのぞいてみると、城内の女たちや幼い者たちが刺し交えて、嵐のあとの花野のように惨たらしくもみなけなげに、朱のなかに俯伏していた。
従兄弟の弥平治光春は、
「たのむ! ……。十兵衛どの、頼むから、一先ずここは退いてくれ」
と、彼の籠手をつかみ、身をもって、彼の行くてに立ちふさがって、ここで稲葉山の寄手をうけて、斬り死しようと眦を昂げて戦っていた十兵衛を、無理無体に、焦土から引きもどして来た。
「ばかなッ。ここを退いて、どうするかッ」
十兵衛は、絶叫し続けた。
平常の寡言で沈重な彼とは――まったく別人のように、知性をかなぐり捨てた修羅武者になっていた。
「水の手まで。……ともかく水の手まで」
宥めると、振り切って、
「水の手へなど行ってどうするのかッ。もう敵は、外曲輪を破り、本丸の味方からも、裏切が出ている今――」