Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme
お草履取なら、身分は軽くても、御馬前で働く時もあるので、末は楽しみだが、その代り生命がけの御奉公も、覚悟せねばならぬ。お台所にいれば、生命の心配はまずないからのう。二ついいことはないものじゃて」
慰めれば、慰められて、はいはいと頷いていたが――しかし藤吉郎自身には、少しもそんな不服は見えなかった。
むしろ、彼は信長から、望外な見出しに預かったことを心から感激しているふうだった。
さて、彼が台所方の職に就いて見ると、第一に、そこの薄暗いことと、陰湿なことと、不潔なことが、目についた。
昼間でも、太陽を忘れているような、生気のない膳部番や、料理人や、老いたるお賄頭が、十年一日の如く、昆布の煮出し汁のにおいの中に住んでいる。
「これはいかん」
藤吉郎には、耐えられないものがあった。彼は、陰気が嫌いである。薄暗い――生気がない――そういう空気はすべて嫌いだった。
「そこらの壁へ、大きな窓を切って、風と太陽を、いっぱいに入れたいものだな」
そう考えたが、台所方には台所方の組織もあり、古顔の上役もいて、その仕事一つも、実行はむずかしく見えた。――藤吉郎は、毎日、商人が納品する鰹節の蝕いを調べたり、椎茸や干瓢の記入などを、黙々とやっていた。