Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme
五郎大夫は、ここの陶器の製法を究めるために、実に、十二ヵ年の辛苦と郷愁に耐えて、異国に暮して来たのだった。
日本から来るには。――海上六百里、長江を溯ってから、なお四百余里もある。――そして、潯陽城(現在の九江)の河港からまた、水路や陸路を経て、廬山をあおぎながら、陽湖をわたり楽平河をめぐり――文字どおり千里の旅を、半歳もかかるのだった。
その幾山河を、明日はまた、日本へ向って帰るのだ。
五郎大夫も、捨次郎も、眠れないほど欣しい!
だが、宵から帳を垂れて、顔も見せずに泣いてばかりいる者があった。子を抱えた梨琴であった。
梨琴は、窯場で五郎大夫と親しくなって、その妾とも家婢ともつかず、この家へ来たものだった。
五郎大夫の研究はその目的を達して、いよいよ曠れて帰る日が来た。かねて覚悟していたことではあるし、彼の多年の苦心が、彼の本国で実を結ぶことを考えると、梨琴は悲しみ以上に、男のために欣ばなければいけないと思った。けれど、まだ三歳のあどけない男の子を、膝に見ると、
「この子をどうしよう」
と、思いみだれ、おとといの夜から泣きつづけて、顔も見せない程だった。