Japanische Klassiker mit Furigana
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せっしょうせき
日本の諸国物語
楠山 正雄
Lesen Sie 日本の諸国物語 (せっしょうせき) von 楠山 正雄 (くすやままさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.040 Zeichen · 158 Bildschirme
うち中たずね回っても、裏から表へと探し回っても、もうどこにも葛の葉の姿は見えませんでした。そしてもう暮れ方の薄明りの中に、くっきり白く浮き出している障子の上に、よく見ると、字が書いてありました。
「恋しくば
たずね来てみよ、
和泉なる
しのだの森の
うらみ葛の葉。」
母親がほんとうにいなくなったことを知って、子供はどんなに悲しんだでしょう。
「かあちゃん、かあちゃん、どこへ行ったの。もうけっして悪いことはしませんから、早く帰って来て下さい。」
こういいながら、子供はいつまでもやみの中を探し回っていました。さっき顔の変わったのに驚いて声を立てたので、母親がおこって行ってしまったのだと思って、よけい悲しくなりました。狐のかあさんでも、化け物のかあさんでもかまわない、どうしてもかあさんに会いたいといって、子供はききませんでした。
あんまり子供が泣くので、保名は困って、子供の手を引いて、当てどもなく真っ暗やみの森の中を探して歩きました。とうとう信田の森まで来ると、とうに夜中を過ぎていました。けっして二度と姿を見せまいと心に誓っていた葛の葉も、子供の泣き声にひかれて、もう一度草むらの中に姿を現しました。