Japanische Klassiker mit Furigana
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ともぐい
日本プロレタリア文学集・20 「戦旗」「ナップ」作家集7
本庄 陸男
Lesen Sie 日本プロレタリア文学集・20 「戦旗」「ナップ」作家集7 (ともぐい) von 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.052 Zeichen · 11 Bildschirme
お菜のない弁当
誰でもその口実をはっきり知っていた。――それは五月十六日の朝からなのだ。その前の日は、犬養総理大臣が白昼公然と官邸で射殺された。でかでかと新聞に書かれたこの大事件によって、少しは景気の盛りかえす世の中が来るかも知れないと漠然と思い、そのことについて大いに談じ合う予算で工場に駈けつけたのだが、職工達は「おっとどっこい」――と許り門のところで堰き止められた。見るとひどく栄養のいい憲兵が長いサーベルをガチャガチャいわせて門衛所からとび出して来た。守衛が、嗄れ声で何か叫んだ。すると憲兵は怒鳴りつける号令声で「一列になれッ」とわめき、忽ち職工達を列べてしまった。
身体検査がはじまった。帽子の裏をひっぺがしたりした揚句、とうとう弁当箱の蓋を取れ――と来た。お菜の何にもはいっていない弁当がいくつもあった。流石の憲兵もしまいには人間並の眼色をただよわして云ったものだ。
「この弁当じゃあ全く遣り切れんなア――」
口鬚ひくひくさせていた守衛はぺこんと頭を低げた。陸軍直轄のこの工場では、武装した憲兵が絶対権を握っていた。そこで一人の労働者はそこら中に響きわたる大声で憲兵に云った。