Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme

Aozora Bunko

供をする者たちは列をなしてつくばい、留守の者は式台からそのうしろに平伏した。安芸は振返って、式台にいる亘理蔵人を見、千葉三郎兵衛を見た。千葉は江戸における家老で、まえの夜この麻布へ来たものであった。――安芸宗重は五十七歳であるが、早くから老けていたわりに、いまでは却って若わかしくみえる。小柄な痩せた躯つきだが、日にやけた膚はよくひき緊り、高い頬骨のあたりは精力的に艶つやとしていた。

「蔵人、三郎兵衛」と安芸は二人をみつめながら云った、「――おれはやがて、帰るぞ」

必ず帰って来る、だが生きて帰るか、死んで帰るかはわからぬ。さらばだという意味が、その短い言葉の中に脈を搏っているように感じられた。蔵人は両手を突いたまま見あげてい、三郎兵衛は式台へ額をすりつけるように平伏した。安芸は向き直って、しっかりと歩きだした。

ほぼ同じころ、下馬さきの酒井邸では、常着のままの雅楽頭が、ただひとり客間に坐って、宙を睨んでいた。彼はまえよりも肥えているが、重みと威厳の加わった相貌のためだろう、ぜんたいがひとまわりも大きくなったようにみえる。年は四十八歳。濃い眉とするどい双眸に、いま烈しい怒りがあらわれてい、脂肪のにじみ出る頬は赤く染っていた。