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Japanische Klassiker mit Furigana

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いんじゅうトリステサ

橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇

橘 外男

Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.788 Zeichen · 299 Bildschirme

Aozora Bunko

その幻影を睨み付けてバリバリと歯噛みをしながら、私はまたあてどもなく歩き廻っていた。

時間がすでに何時頃になっていたかを覚えていなかった。どこをどう歩いてどうして銀行へ来るようになったかを覚えていなかった。

ただ覚えているのはいつものように守衛たちが……昇降機の娘たちが……使い走りの給仕たちが……そしてここへ来るまでの幾つかの階段や廊下で、擦れ違った幾人かの行員たちの丁寧な会釈に対して表面だけはいつもと変らぬ鷹揚な会釈を返したことを、覚えているばかりであった。そして気が付いた時には私はいつの間にか銀行へ来て、三階の頭取室の中で机の前に坐っている自分を見出したのであった。大体が放縦なことのできぬ持ち前であったから、今まで私は大抵定時には出勤するようにしていたが、しかしそれでも頭取となれば朝出掛けによそへ廻ったり、あるいは家で調べ物をして遅くなって出勤しなければならぬこともある。私の出勤時の不定は秘書も不断から慣れ切っていたが、私が出勤して来たと見ると今までタイプライターを打っていた手を止めて、小腰を屈めながら卓子の上に重ねられた編み籠を二つに分けて並べ出した。