Japanische Klassiker mit Furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.788 Zeichen · 299 Bildschirme
「先生!」と息せき切って飛び込もうとした途端、おや! と思わず私は耳を澄ませた。聞き慣れた声が耳をうってきたからであった。フロールも私と同じように不審を質しに来ているんだなと思った瞬間、私は言おうようもなく嬉しくて胸がほてった。教師に質疑を済ませた後で、フロールと二人、課せられた対話の話をしながら帰る道々の楽しさが、胸をうってきたからであった。
「しかし、可笑しいではないか! 大体お前は、あの子と仲がよかったはずなのに、なぜ急にそんなことを言い出すんだね?」
半ば開かれた扉の陰になってフロールの姿は見えず声も小さくて私の耳へは入らなかった。
「そうか……あの子が可哀そうだから仲よくしているが、大勢のお客様のいらっしゃる前で、二人で並んで立つのは厭だというんだね? 先生の手で、あの子にわからんように、組合せを替えてくれ……とこう言うんだね?」
「だって、先生! 跛者なんですもの。あたし恥ずかしいわ」と、明らかにフロールの声であった。
途端に私は、眼の前が眩々っとした。どこをどう走ったのか、家まで駈けている道が私にはわからなかった。ただ無我夢中で二階の自分の部屋まで辿り着いて寝台の上に身を投げると蒲団にしがみ付いて、声を限りに泣いた。