Japanische Klassiker mit Furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.788 Zeichen · 299 Bildschirme
ものとなさずして、かくも美しき、かくも我儘なる妻をみすみす死の手に引き渡し得るものがあろうか! しかも私はかくのごとくあらん限りの媚態、あらん限りの手管を弄した妻に存分に女のすべてを尽させた後、なおもこれに拳銃を向けた。
「こんなにも……こんなにも存分になさって……まだそれでも……私をお殺しになるの……た……助けて! 誰か……た、助けて!」と絶叫した妻の下腹部眼蒐けて悪魔のごとくに嘲ら笑いながら拳銃弾を打ち込んだ。紅に染まって虚空を掴んだその心臓部眼蒐けて、さらに続けざまに二発を打ち込んだ。そして勝って勝って勝ちのめして、生れて初めて恍惚とした会心の笑みを洩らしながら、死の勝利の快感に酔って、妻の屍体に見惚れていた時に、扉を蹴破って闖入して来た二名の警察官によって、逮捕せられたのである。この顛末もまた前掲新聞所報のごとくであるが、泣いて詫びる妻を殺したことによって、私を野獣のごとき夫と目するならば、これにも一言明快なる反駁を加えておこう。もし私が野獣のごとき夫であったならば、おそらくは自己の存分にした後私は犬に汚されたごとき妻は棄て去ってしまったであろう。