Japanische Klassiker mit Furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.788 Zeichen · 299 Bildschirme
た。この物凄いほどの深夜の寂寞を瞶めたまま、私はしばらく佇立していたが、やがて溜息をして再び扉を閉めようとした途端、思わずギョッとして歩を止めた。
どこからかヒソヒソと人の話し声が聞こえてくるような気がしたからであった。
この深夜人の話し声が聞こえてくるとすれば、それは妻の部屋以外にはないはずであった。爪先立って二足三足跫音を忍ばせた途端、今度は明瞭にその声が聞こえてきた。
「あら違うわよう……悲哀! まあ、厭だわ……ホホホホホ」
低い声ではあったが、疑いもなく妻の声であった。ハハア妻もやっぱり眠られずに悲哀とふざけているんだなと思った途端何とはなしに吻としたが、次の瞬間大急ぎで扉を閉めて、私は寝台へ駈け上るや否やパチンとスイッチを消して、耳を抑えながら突っ伏してしまった。
何という柔らかな柔らかな蕩けるような妻の声であったろう。結婚以来未だかつて一度も私は妻の口からこんなにも夢見るような恍惚した声を聞いたことはなかった。あの取り澄ました権高い妻のどこから出るかと思われるほど、それは甘い甘い絶え入るような声、そして溶け入るような含み笑いであった。しかももしこの甘い声をもう一度聞いたならば、その人恋しと思っている私の理性は、たちまち箍を外して、年甲斐もなく鍵を掛けた妻の寝室の扉に体当りでもしかねまじいのを、