Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.724 Zeichen · 355 Bildschirme
竹林の中に腰をおろした彼は、うずくまるように首をたれて考えこんだ。もう日は暮れかかっており、やぶ蚊がしきりに襲って来た。彼は、しかし、それを平手でうつだけで、立ち上ろうとはしなかった。指なしの権、饅頭虎、曾根少佐、西山教頭、馬田、そうした人たちの顔がつぎつぎに彼の考えの中を往復した。そのうち、ふと、ひとりの毒々しい女の顔が浮かんで来た。それは春月亭の内儀の顔だった。と、その瞬間、ふしぎにも、彼の心にさっと明るい光が流れこんだ。それは、春月亭の問題のあとで、朝倉先生をたずね、ミケランゼロの話を聞かされたことを思い出したからだった。
「この石の中には女神がとりこにされている。私はこれを救い出さなければならない。」
そう言って、こけむした、きたない石の中から美しい女神の像を刻み出したミケランゼロの心を、父は自分に求めているのだ。父と朝倉先生とは、どうしてこうも人生に対するものの考え方の根柢が一致しているのだろう。そして自分は、何といういい父をもち、何というすぐれた先生を恵まれたことだろう。
彼は勢いよく立ちあがった。そして、竹林の密生した葉の間からもれる星の光を仰いだ。