Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme
床の間の掛軸に筆太に書かれた「平常心」の三字も、今のかれにとっては、あまりにもへだたりのある心の消息でしかなかったのである。
塾生たちの出はらった本館の静けさは、気味わるいほどだった。そとには風もなかった。霜柱のくずれる音さえきこえそうな気がした。次郎は、しかし、あたりが静かであればあるほど、気がいらだつのだった。
ふと、しずかな空気をやぶって、玄関のほうに人の足音がした。つづいて、
「次郎さん、いらっしゃる?」
と朝倉夫人の声がきこえ、事務室と次郎の室との間の引き戸をあける音がした。
次郎があわてて広間にとび出すと、朝倉夫人は、もう廊下をこちらに歩いて来ながら、
「何かお仕事?」
「いいえ。」
次郎はどぎまぎして答えた。夫人は微笑した眼を次郎にすえながら、
「このごろ空林庵のほうはすっかりお見かぎりのようね。でも、今日はぜひいらっしていただかなければなりませんわ。」
次郎がいくぶん顔をあからめながら、眼を見はっていると、
「今日は、先生と三人で重大会議を開かなければなりませんの。」
「重大会議? 何でしょう。」
朝倉夫人は、やはり微笑したまま、それにはこたえず、