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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

「もし大河さんが外出していらっしゃらなかったら、次郎さんとごいっしょに、ご相談に加わっていただきたいんですって。だけど、いらっしゃるかしら。」

「さあ。」

次郎は大河の名が出たので、いよいよまごついた。「さあ」というかれの返事は狼狽の表現でしかなかったのである。

「じゃあ、ちょっとお室をのぞいてみてくださらない? そして、もしいらしったらすぐごいっしょに空林庵のほうにおいでくださいね。」

朝倉夫人は、そう言って、いそいで玄関を出て行った。

次郎は、考える余裕もなく、すぐ第五室に行って戸をノックした。

「はあい。」

にぶい大河の返事がきこえた。戸をあけると、大河は坐禅でも組んでいたかのように、背筋をのばしてあぐらをかいていた。かれの前の机の上には、何一つのっていなかった。窓の光線をうしろにしてふり向いたその顔には、近眼鏡のふちだけが強く光った。

次郎が朝倉夫人の言葉をつたえると、

「そうですか。」

と、べつにふしぎに思った様子もなく、のっそりと立ちあがり、それっきりだまって次郎のあとについて来た。次郎も空林庵の玄関を上がるまで、口をきかなかった。

空林庵の朝倉先生の書斎は、深く陽がさしこんで温室のようにあたたかだった。