Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 146.773 Zeichen · 294 Bildschirme
僕、そんな人を軽蔑するよ。お祖母さんだって、母さんだって。」
次郎は涙ぐんでいたが、
「僕、憎まれたってもう何ともないよ。……僕、これから正直になるんだい。」
恭一は、次郎の言った言葉の前後の関係が、はっきりしなくて、ちょっと考えていた。
すると次郎は、
「さようなら。」
と、だしぬけに身を引いて、自分の行く方角にさっさと足を運び出した。
恭一は、次郎が小半町もはなれるまで、突っ立って彼を見おくっていたが、やっと気がついたように、
「さようなら!」
と叫んだ。次郎もふりかえって、もう一度、
「さようなら!」
と叫び、それから急に足を早めた。
ちらほら咲き出していた菜種の花が、うす日をうけて膚寒い春風の中にそよいでいた。次郎にはいやにそれが淋しかった。二里あまりの道を、彼はうつむきがちに歩いた。そして考えるともなく昨日からのことを考えはじめた。
本田の家でのことを思うと、彼の気持はめちゃくちゃだった。夢中で牛鍋をつついた時の喜びでさえ、今はかえってにがい思い出でしかなかった。それにくらべて、大巻の家の空気は何という明るさだったろう。それは同じ人間の世界だとは思えないほどちがった世界で、誰も彼もが好意にあふれ、すべてが賑やかで、しかも力にあふれていた。