Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 146.773 Zeichen · 294 Bildschirme
次郎が本校舎の前まで来ると、ちょうど職員会議が終ったところらしく、先生たちがぞろぞろと玄関から出て来るところだった。彼は先生たちに顔を見られるのがいやだったので、校舎の陰にかくれて、人影の見えなくなるのを待つことにした。
その間に、彼は、自分の着物――制服が出来るまで和服に袴だった――が破けていないかをしらべてみた。不思議にどこにも大した破損はなかった。ただ袴の右わきに二寸ばかりの綻びがあるだけだった。時間割をうつすために持って来ていた手帳と、父に買ってもらった蟇口とを懐に入れていたが、それらは無事だった。
肩や腿のへんに二三ヵ所鈍痛が感じられ出したが、次郎はほとんどそれを気にしなかった。彼が最も気にしたのは、頬がはれぼったく感ずることだったが、手でさわってみると、さほどでもないらしいので安心した。
(これなら大丈夫、自家で気がつく人はない。)
そう思って、門の方をのぞいて見ると、もう人影は見えなかった。彼は思いきって立ち上り、あたりに注意を払いながら門を出た。
門を出ると、無念さが急にこみあげて来て、涙がひとりでに頬を流れた。だが、同時に、不正に屈しなかったという誇りが、彼の胸の中で強く波うっていた。