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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 146.773 Zeichen · 294 Bildschirme

Aozora Bunko

「僕、じゃあ、母さんって言うよ。」

彼はいかにも無雑作に答えた。しかし、答えてしまって妙な味気なさを覚えた。それはちょうど精いっぱい力を入れて角力をとっている最中、何かのはずみで、がくりと膝をついたような気持だった。

お延には、次郎の返事があまりにだしぬけだった。彼女は、もっと何か言うつもりでいたらしかったが、一瞬、あっけにとられたように眼を見はった。それから膝をのり出し、次郎の顔を下からのぞくようにして、

「そう? ほんとう?」

と、念を押した。

次郎は念を押されると、何だかあともどりしたくなって来た。そのくせ、首を強く縦に動かした。そして、お延がまだ疑わしそうな眼をして、自分の顔をのぞいているのを見ると、

「ほんとうさ。」

と、おこったように言って、ぷいと座を立った。

「じゃあ、お祝いに、叔母さんがこれから御馳走をこさえるわ。」

お延は、追っかけるようにそう言って、お針の道具をしまいはじめた。

次郎は、ふり向きもしないで土間におり、門口を出たが、足はひとりでに墓地に向かっていた。

墓地をかこむ女竹林は、暮近い風に吹かれて、さむざむと鳴っていた。次郎は、母の墓がきょうは妙に寄りつきにくいような気がして、しばらくは、五六間もはなれたところから、じっとそれを見つめていた。