Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 159.223 Zeichen · 320 Bildschirme
その表情から、彼は彼女が本当に自分を実家に帰してしまう気でいるかを読みたかったのである。しかしお浜の眼は、険しく光って、じろじろと彼とお民とを見くらべているだけで、彼には何の暗示も与えなかった。
「わかったね。」
と、お民は、長い説教のあとで、念を押すように言った。次郎はそれに対して、無表情にうなずいた。
彼は心の中で、この時、自分の眼の前に二人の敵を見ていたのである。一人は正面の敵であるお民、もう一人は、裏切者としてのお浜であった。
「裸ではしようがないわ、何か着物を着せておくれよ。」
正面の敵が裏切者を顧みて言った。しかし、裏切者は、相変らず険しい眼付をしたまま動かなかった。
次郎は、横目で裏切者の顔をちらとのぞいたが、その顔からは何の合図もなかった。彼は捨鉢のような気になって、急に立ち上ると、蚊帳の隅にくたくたにまるめてあった汗くさい浴衣を自分で着て、くるくると帯をしめた。
「偉いね。」
と、正面の敵が言った。
次郎は上り框の下にうつ伏しになって、自分の草履を探しながら、眼がしらの熱くなるのを、じっとこらえた。
その間に、お民は提灯に火を入れた。