Japanische Klassiker mit Furigana
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ぶそうせるしがい
武装せる市街
黒島 伝治
Lesen Sie 武装せる市街 (ぶそうせるしがい) von 黒島 伝治 (くろしまでんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 115.959 Zeichen · 234 Bildschirme
悩ましげに春を刺戟する、アカシヤの花が霧を通して、そこらの空気に、くん/\と匂っている。
兵士達は、駅前の広場で叉銃して背嚢をおろした。営舎がきめられるのを待った。彼等は、既に、内地にいる時よりも、言葉も、行動も、気性自身が、荒ッぽく殺気立っていた。
「宇吉ツぁん。」
無数の小さい日の丸の旗を持って、出迎えている、人々の中から一人の女が、ふいに一等卒の柿本の前にとび出した。中年の歯を黒く染めた女だった。彼女は、柿本の腰にすがりついて、わッと泣き出した。……「宇吉ツぁん! よう来てくれたのう、宇吉ツぁん!……」
「中ン条のおばさんじゃないか?」ちょっと一等卒は上官をはゞかって当惑げな顔をした。が、やがて云った。
「お、お、お……」その女は、嬉しさと、感激がこみ上げてくるものゝように声をあげて泣いた。「……お前さんが来て呉れたんか。……お、お、お……これで私ッしらも助かろうわい。お、お、お……」
この感情は、露わに表現しないにしろ、迎えに出揃った居留民達のどの胸にも、浸潤しているところのものだった。
兵士達が焚き火を始めた。その焔が、ぱッと燃え上った。柿本は、自分の膝に崩折れかゝったこの婦人の蒼ざめて、憔悴した、骨ばった顔を見た。