Japanische Klassiker mit Furigana
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しけんといきなわ
死剣と生縄
江見 水蔭
Lesen Sie 死剣と生縄 (しけんといきなわ) von 江見 水蔭 (えみすいいん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.104 Zeichen · 31 Bildschirme
それは立木の台下に横わっているので有った。
程もなく二人は其渡頭にと辿り着いた。此辺は誠に寂しい処で有った。台下にはちらりほらり、貧しそうな農家は有るが、新利根川端には一軒も無く、唯蘆荻や楊柳が繁るのみで、それも未だ枯れもやらず、いやに鬱陶しく陰気なので有った。
此所の渡しというのは、別に渡し守がいるのではなく、船だけ備えて有るばかりで、世に云う手繰り渡しに成っているのだ。それは両岸に高く材木を三本組合せて立て、それに藤蔓を綯って引張って置き、それに小さな針鉄の輪を箝めて、其輪に綱を結んで、田船の舳に繋いで有るのだ。田船の舳と艫とには、又別に麻縄が長く結付けてあって、どちらも両方の岸にまで届く程の長さがある。つまり田船の中に乗った者が、自分で舳の縄を手繰れば、向岸へ着く。其後へ又来た者が、其空船を此方へ呼戻す時には、岸から艫の縄を手繰ると、人は無くても船は房って来る、然ういう甚だ元始的の方法で有った。
「この渡しを越すと越さぬとでは、道程に大変な損得が有るそうな」と竜次郎は云った。
「生憎、船は向河岸に着いていますが、縄さえ手繰れば此方へ戻って来ましょう」