Japanische Klassiker mit Furigana
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しけんといきなわ
死剣と生縄
江見 水蔭
Lesen Sie 死剣と生縄 (しけんといきなわ) von 江見 水蔭 (えみすいいん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.104 Zeichen · 31 Bildschirme
何んという無慈悲な坊主だろう。人を助ける出家の身が、鰻掻きをして殺生戒を破るさえ無茶苦茶なのに、彼岸に達する救世の船。それを取上げて了ったので有った。一体何寺の何んという坊主だろう。憎さも憎しと竜次郎は、歯軋りをして口惜しがった。併し新利根川の堀割を隔てているのて、如何する事も出来なかった。
「此上は他の渡しのある処まで廻り路でも行くの他は無い。ちぇっ、憎っくき坊主奴」と憤慨した。
「旦那様、御心配なさいますな。私が船を取って参ります。向河岸まで行くのは、何んの仔細は御座いません」と事も無気に小虎が云った。
「えっ、船を取りに向河岸へ行く」
「私は女軽業師、幸い斯うして、彼方から此方へ、藤蔓が引渡して御座いますから、それを伝って行けば何んでも無い事で御座います」
「成程なあ」
普通の者には出来ぬ芸だが、女軽業師の小虎としては、何んの造作も無いので有った。一座を脱出する時に、変り易い秋の空を気遣って、手当り次第に雨傘を持出したのが、図らず此所で役に立った。太夫身支度の間今一囃子、そんな景気を附けるでもなく、唯浴衣の裾を端折っただけで有った。赤の色褪めた唐縮緬の腰巻が、新堀割の濁った水の色や、小堤下の泥の色に反映して、意外に美しく引立って見えるので有った。