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Japanische Klassiker mit Furigana

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ししゃのしょ

死者の書

折口 信夫

Lesen Sie 死者の書 (ししゃのしょ) von 折口 信夫 (おりくちしのぶ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 62.340 Zeichen · 126 Bildschirme

Aozora Bunko

美しい彩画は、七色八色の虹のように、郎女の目の前に、輝き増して行く。

姫は、緑青を盛って、層々うち重る楼閣伽藍の屋根を表した。数多い柱や、廊の立ち続く姿が、目赫くばかり、朱で彩みあげられた。むらむらと靉くものは、紺青の雲である。紫雲は一筋長くたなびいて、中央根本堂とも見える屋の上から、画きおろされた、雲の上には金泥の光り輝く靄が、漂いはじめた。姫の命を搾るまでの念力が、筆のままに動いて居る。やがて金色の雲気は、次第に凝り成して、照り充ちた色身――現し世の人とも見えぬ尊い姿が顕れた。

郎女は唯、先の日見た、万法蔵院の夕の幻を、筆に追うて居るばかりである。堂・塔・伽藍すべては、当麻のみ寺のありの姿であった。だが、彩画の上に湧き上った宮殿楼閣は、兜率天宮のたたずまいさながらであった。しかも、其四十九重の宝宮の内院に現れた尊者の相好は、あの夕、近々と目に見た俤びとの姿を、心に覓めて描き顕したばかりであった。

刀自・若人たちは、一刻一刻、時の移るのも知らず、身ゆるぎもせずに、姫の前に開かれて来る光りの霞に、唯見呆けて居るばかりであった。

郎女が、筆をおいて、にこやかな笑いを、円く跪坐る此人々の背におとしながら、のどかに併し、音もなく、山田の廬堂を立ち去った刹那、心づく者は一人もなかったのである。