Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わたらせがわ

渡良瀬川

大鹿 卓

Lesen Sie 渡良瀬川 (わたらせがわ) von 大鹿 卓 (おおしかたく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 280.528 Zeichen · 557 Bildschirme

Aozora Bunko

出水の歩みは時計の針のように、遅々としているようでいて結果を見ると驚くばかりだった。さきほど正造の歩いて来た道はもう濁水の底に沈んでいた。帰るには少し上へのぼって才川の堤防を辿りつつ高地を迂回して行かねばならない。それも堤防が切れれば、いつ帰れなくなるかも知れなかった。

正造は雨もやや小降りになった夕闇のなかをようやく法雲庵へ辿りついた。今もって帰らないところを見れば水死したにちがいないということになり、今しも住職の鷲見をはじめ伊藤や役場員や村民数人が、庫裡の簷下に額を集めて捜索の相談をしているところであった。なかにも伊藤の心配は人一倍深刻だったので、胸を撫でおろす手つきをして、

「先生、本当に僕は寿命がちぢまりましたよ」

恨みがましい声だった。正造は舟津川まで行って出水でかえれなくなった次第を話して、一同の憂慮を謝した。伊藤は熱い番茶を正造へ取りつぎながら、

「それにしても一人で出かけるなど、あんまり無謀ですよ」と、なお不平そうに正造を責めた。

「だいたい先生が蓑笠で出かけられるのが間違っています。水防のことなどは先生にとっては小事です。村の人たちに委せておけばいいのです」