Japanische Klassiker mit Furigana
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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
Lesen Sie 渡良瀬川 (わたらせがわ) von 大鹿 卓 (おおしかたく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 280.528 Zeichen · 557 Bildschirme
東奔西走、いや今度は南船北馬というところですか」
正造は軽くうなずいて「わしはね幼少のときから畳の上で飯を食ったことはない、だからもう奔走は馴れっこだ。わざわざ寺に籠ったりして時間をかけて参禅する話など聞くと、時にはそんな余裕のある人がうらやましくなることもある。しかし負け惜しみじゃないが、わしの坐禅は奔走にある。胆をねるは坐上に限ったことでない。馬上、車上、船上、いわば危道を踏むうちにも機縁がある。すなわちみな坐禅じゃ。だからわしは到るところ、皆その行く処を坐禅にしている」
言葉なかばに正造は袴の膝に手をおき両眼をとじた。山田も瞑想をさまたげまいとして黙然と見まもっていた。だが、あまりに静かな息づかいなので、そのまま眠ってしまったのかと怪しんでいると、やがて唇がかすかに動いて、
「わしは明治十九年から二十三年までというものは居眠りしていた。二十三年から少々めざめて、二十八年になってようやく宗教のことに心づいて、また十九年以前にもどって真人間になることができた」
それきりでまた黙想がつづいた。どの辺へきたのか船の中が夕闇に沈んできた。ゆき交う船があるらしく櫓声がきこえ、どらごえで叫び合うのがきこえた。