Japanische Klassiker mit Furigana
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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
Lesen Sie 渡良瀬川 (わたらせがわ) von 大鹿 卓 (おおしかたく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 280.528 Zeichen · 557 Bildschirme
氷室おろしの凩が、山は雪かと思われる鋭い唸りをたてて木立に吹きつけるのが聞えたあとは、ひとしきり屋棟が軋みつづけた。それがやむと二階で寝ている親戚の人たちのいびきが洩れて、沈々と夜の更ける気配であった。やがて、裏の母屋の方から足音がして、ガラガラと戸障子があき、正造がもどってきた。身長五尺二寸、体重二十貫の重味で古い畳がみしみしと鳴った。正造は線香をたてて位牌の前へ端坐し、浄蓮院富翁大徳清居士と口のうちにつぶやいてややしばらく項を垂れていたが、傍の行燈のそばへ座を移すと、袴の膝に嵩ばった白い風呂敷包をのせて解きだした。
「私はさきへやすませて貰いました」隣室から妻のかつ子が声をかけた。
「うむ、うむ、わしにかまわずやすんで下さいよ」正造は他人行儀な丁寧な言葉遣いをしたが、途中から気がついたのかぞんざいにいい足した。「連日連夜のはたらきで疲れただろう。遠慮なく寝なさい」
正造は指先に唾をつけて書類をめくり、暗い火影へ差しつけるようにして読みたどった。
「あなたも今夜こそ早くやすまなくては……、ゆうべも一睡もしなかったのだし……」
「明日は議会がある。……総理大臣の施政方針の演説がある日だ。