Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わたらせがわ

渡良瀬川

大鹿 卓

Lesen Sie 渡良瀬川 (わたらせがわ) von 大鹿 卓 (おおしかたく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 280.528 Zeichen · 557 Bildschirme

Aozora Bunko

彼等はすぐ俥をつらねて北へ急いだ。淵江村の保木間という字へかかると、騎馬の一群が馬蹄のひびきと馬の喘ぎを残してすれちがった。五人の憲兵である。千住まで退いて一行を阻もうとするものらしかった。やがて行手の朝靄の中に、簑笠をつけた被害民の群が見えだした。一人の巡査が先頭に立って、百人余りの人数だった。なかに歳のころ七十に余る老人の姿も見えた。正造は俥を停めて、「皆さん、しばらく待って下さい」と大声に呼ばわった。

「田中正造です。昨夜の電報を見て、驚いて夜通しで馳けつけたところです。皆さん、さぞ辛かったろう。さぞくたびれたであろう」

正造は言葉をつまらせて、目を押し拭いつつ俥を下りた。「先生だ」「田中さんだ」という声がつたわると、彼等は順々に足をとめて道端に佇んだ。淵江村の村長が正造の前へきて名刺を出した。坂田庄助といって色の黒い、眉宇に気魄のうかがえる男だった。あとからまた一群れの被害民が到着して群集に加わった。正造は村長に頼んで付近の農家の庭を借り、彼等をそこへ入れた。だが、人数は一群また一群と到着して、付近四五軒の農家の庭はたちまち一杯になり、あふれて街道の両側を塞ぎだした。