Japanische Klassiker mit Furigana
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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
Lesen Sie 渡良瀬川 (わたらせがわ) von 大鹿 卓 (おおしかたく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 280.528 Zeichen · 557 Bildschirme
「私たちは一昨夜以来一睡もしていません。憲兵の馬に追われて、仕方なく道端にごろ寝したり、こっそり納屋の軒下を借りたりしていました。すると、近所の宿屋の者が可哀そうだと思ったのか、裏庭に蓆を敷いて休ませてくれました。やれ有難いと思っていると、また憲兵がやって来て、被害民がいたら出せ、出せと責めるのが聞えるのです……」
その男が声をつまらせると、隣りの者があとをつづけた。
「食うものも食えず歩いて来たのです。用意に割麦を持ってきた者も、それを炊く鍋がない。昨夜は、桜井村で鍋釜を借りようと思っても、どこでも貸してくれません。村長は、警察から厳命されているから駄目だといいます。なんということです。私たちは、自分で飯を炊いて食うことも許されないのですか。飯も食わずに死ねというのですか」
涙声が、しだいに憤りの叫びとなった。こちらの石の上、彼方の木の下と、四方からそれに応じる声が起って、蜂の巣をつついた騒ぎになった。正造は鎮撫しようにも自分自身が感極ってとめどなく涙がでるばかりであった。一方社務所の裏では坂田村長の指図で、五俵の米が磨ぎあがり、大釜の下で太い薪がぼうぼう燃えていた。