Japanische Klassiker mit Furigana
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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
Lesen Sie 渡良瀬川 (わたらせがわ) von 大鹿 卓 (おおしかたく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 280.528 Zeichen · 557 Bildschirme
黒木綿の綿入れに大きな五ツ紋の黒羽織黒袴足袋跣足で、人々があっと思うまに二三歩すすみ出て、
「お願いがございます」
懐からとりだした紙包を右手に高く捧げ、同じ叫びを三声四声必死にくりかえしつつ、御馬車の方を目ざして近づこうとした。いうまでもなく田中正造その人であった。
しかし、このとき御馬車はすでに、正造より三四間も前方をすすんでいた。後衛の騎兵特務曹長伊知地季盛がこの態を見るや否や、咄嗟に馬首をむけ変え、槍を打ちふって正造を遮ろうと迫ってきた。だが、正造の面前で駈けまわろうとしたその一刹那、どうしたはずみか長槍が宙にひらめいて、馬が横ざまにどッと倒れ、曹長は一二間さきに投げだされた。このとき早く、警護の麹町署の巡査二人が駈けつけて正造を抱き止めた。もみ合ううちに村島麹町署長も駈けてきて、三人でもだえる正造をついに取りおさえた。
鹵簿はこの騒ぎにはなんのお障りもなく、恙なく宮城へ還御あらせられた。
拝観人の群が驚き騒ぐなかを、正造は警官にひかれて、ひとまず虎ノ門内の派出所へ伴われた。まず一椀の水をもらって呑みほし、それから落着いた態度で住所氏名の尋問に答えた。