Japanische Klassiker mit Furigana
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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
Lesen Sie 犀星王朝小品集 (おぎふくうた) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.794 Zeichen · 211 Bildschirme
梅の梢にきょうの夕陽はひとしきり華やいで間もなく、日ぐれがいきなりやって来て暗くなるのであろう、西、東の対にはや灯火がともれはじめた。
「では今宵にさいわいあれ。」
貞時が去り、筒井はくらみかけた庭先を去ることをせず、まだ明るみを持つ雲の色を見つめていた。変ることに迅く、形を消すに早い夕雲は間もなく鼠色のひと色にとざされてしまった。だが、まだ筒井は気のせいか庭戸から離れようとしなかった。その時、築地の外に落葉をふみ分ける音らしいものがしたが、筒井は気にしなかった。しかし音はなおつづいてそれが人の跫音であることを知った。こういう日暮に誰人の跫音であろうと、筒井ははじめて注意を向けた。跫音は裏戸のあたりで停ったらしく、何となくその方に眼をとどめた。その折、低い声音を忍んで二声ばかり聞え、その声は実に遠い記憶に応えのある声だった。
「筒井、筒井、」
筒井は愕然として髪の根を釣られるような緊迫した一瞬の中にあった。名前はふたたび呼ばれた。その時、ふたたび駭きに憑かれた筒井はその声のぬしが、四年前に別れた男であることをもはやうたがうことが出来なかった。とうとう戻って見えられた。