Japanische Klassiker mit Furigana
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たまものまえ
玉藻の前
岡本 綺堂
Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme
用があるならあす出直して来やれ」
千枝松はいよいよ焦れた。彼は返事の代りに表の戸を力まかせに続けて叩いた。
「ええ、そうぞうしい和郎じゃ」
口小言をいいながら婆は起きて来て、明るい月のまえに寝ぼけた顔を突き出すと、待ち構えていた千枝松は蝗のように飛びかかって婆の胸倉を引っ掴んだ。
「言え。となりの藻をどこへやった」
「なんの、阿呆らしい。藻の詮議なら隣りへ行きゃれ。ここへ来るのは門ちがいじゃ」
「いや、おのれが知っている筈じゃ。やい、婆め。おのれは藻をそそのかして江口の遊女に売ったであろうが……。まっすぐに言え」と、千枝松は掴んだ手に力をこめて強く小突いた。
「ええ、おのれ途方もない言いがかりをしおる。ゆうべのいたずらも大方おのれであろう。爺さま、早う来てこやつを挫いでくだされ」と、婆はよろめきながら哮った。
翁も寝床から這い出して来た。熱い息をふいて哮り立っている二人を引き分けて、だんだんにその話をきくと、彼も長い眉を子細らしく皺めた。
「こりゃおかしい。ふだんから孝行者の藻が親を捨てて姿を隠そう筈がない。こりゃ大方は盗人か狐のわざじゃ。盗人ではそこらにうかうかしていようとも思えぬが、狐ならばその巣を食っているところも大方は知れている。