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Japanische Klassiker mit Furigana

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たまものまえ

玉藻の前

岡本 綺堂

Lesen Sie 玉藻の前 (たまものまえ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.703 Zeichen · 261 Bildschirme

Aozora Bunko

なんだか居心の悪い兼輔は、玉藻と眼をみあわせて早々にそこを逃げて行ってしまった。頼長はまだそこに立っている玉藻には眼もくれないで、薄むらさきの霞のうちに暮れかかる春の夕空を静かに打ち仰いでいた。嵐が少し吹き出したとみえて、花の吹雪が彼の白い立ち姿をつつんで落ちた。

「左大臣殿」と、玉藻はしとやかに声をかけた。

「なんじゃ」と、頼長も静かに見かえった。

「嵐が誘うてまいりました」

「花もここ二、三日が命じゃのう。お身は兼輔とここで何を語ろうていた」と、頼長は笑いながら訊いた。

「歌物語など致しておりました」

「恋歌の講釈か」と、彼はまたあざ笑うような眼をした。

「はい。恋の取り持ちを頼もうかと……」

こうしたなまぬるい恋ばなしを好まない頼長も、この美麗な才女に対してあまりに情ない返事も出来ないので、いい加減に取り合わせて言った。

「お身ほどの者でも、人を頼まいでは恋はならぬか。恋はなかなかにむずかしいものじゃな」

「身にあまる望みでござりますれば……」

玉藻は遣る瀬ないように低い溜息をついて、頼長の顔をそっとのぞいた。人を蠱惑せねばやまないような情け深い女の眼のひかりに魅せられて、頼長の魂は思わずゆらめいた。